現場報告

現場の指揮官は何かに追われる様に、大量の情報を含んだ指示を、手短に隊員達に伝える。彼があっという間に喋り終わると、重苦しい低音の声の呪縛から解き放たれた隊員達の頭には既になんの情報も残っていなかった。大枠を受け取ったわたしは、隊員の皆に、彼が言いたかった事は多分こうじゃないか?と伝えると、そこから更に謎が深まり、最終的には一体何が正解なのか分からなくなった。皆それぞれが自分にのしかかるノルマや責任が軽くなる様な解釈の仕方をしているようだった。それも無理はない。皆正規雇用ではなく、アルバイトの兵士だからだ。何故この現場に投入されたのかも分からない、ただただ派遣会社の担当者を恨み、また今日も1人が早期除隊していった。指揮官の指示もまた、状況に応じて細かく変化する。それは更にその上の上層部からの命令が散発的で、思い付き発言に近いからだと思う。細かく変化した命令は前線のアルバイト兵には全てが伝わらず、グループLINEという雑なツールで昼夜休日問わず飛び交った命令や改定事項が生死を分ける内容だったりするので、1名が被弾すると総崩れになってしまう。

指揮官もさぞかし恐ろしいだろう。自分にのしかかる重責に時折、辟易したため息で悪態をついて見せる。ここはとても恐ろしい現場だ。